【要注意】犬の嘔吐物ががうんちみたい?考えられる原因と対処法

愛犬が突然嘔吐し、その吐瀉物がまるで「うんちのような見た目」だった場合、飼い主としては大きな不安を感じることでしょう。

特に、吐いたものが茶色くドロッとしていたり、異臭を放っていたりすると、「体の中で何か深刻な異常が起きているのでは?」と心配になります。

犬の嘔吐は比較的よく見られる症状ですが、その内容物が「便のように見える」場合は、一般的な吐き戻しとは異なる病的サインである可能性があります。

このページでは、犬がうんちのような嘔吐をする原因、判断のポイント、対処法、動物病院を受診すべきタイミングについて、獣医療の知見をもとにわかりやすく解説していきます。

犬の嘔吐と便の違いとは?

犬の体から排出される「嘔吐物」と「便」は、一見似たように見えることがありますが、その発生メカニズムはまったく異なります。

まず、嘔吐とは胃や小腸上部の内容物が口から排出される現象です。

多くの場合、消化途中の食べ物、胃液、胆汁などが含まれ、黄色〜茶褐色の液体状、あるいは半固形状で出てくることがあります。犬にとっては一時的な胃の不調で起こるケースも多く、すべてが病的とは限りません。

一方、便は大腸で形成された老廃物で、直腸から肛門を通じて排出されるものです。

水分の少ない固形物で、強い臭気を伴うのが特徴です。

しかし、犬が吐いたものが「便のように見える」場合、それは胃腸の異常によって血液や消化物、胆汁などが混ざり、色や質感が変化している可能性があります。

また、腸閉塞や誤飲により、腸内の内容物が逆流して嘔吐されることもあるため、見た目だけで「吐物」と「便」を正確に見分けるのは困難です。

そのため、「うんちみたい」と感じた場合には、内容物の色・臭い・頻度などを慎重に観察し、必要に応じて動物病院での診断を受けることが重要です。

犬がうんちみたいな嘔吐をする主な原因

犬が吐いたものが「うんちのように見える」場合、軽度の消化不良から緊急性の高い疾患まで、さまざまな原因が考えられます。

ここでは代表的な5つの原因を解説します。

①異物の誤飲

最も一般的な原因の一つが異物の誤飲です。

犬は好奇心が強く、食べ物以外のものも口に入れてしまうことがあります。特に、他の動物の糞や腐敗したものを誤って摂取した場合、それを吐き戻す際に「うんちのような嘔吐物」として排出されることがあります。

この場合、吐瀉物から強い悪臭がすることが多く、再発や腸閉塞のリスクもあるため注意が必要です。

②胃や十二指腸からの出血(血性嘔吐)

胃潰瘍や消化管の出血が原因で、嘔吐物が黒っぽくタール状に見えることがあります。

これは血液中の鉄分が胃酸と反応し、酸化することで黒色を呈する「コーヒー残渣様嘔吐物」と呼ばれる状態です。

便と見間違うことも多く、明らかに病的なサインのため、早急な受診が必要です。

③腸閉塞や重度の消化器疾患

腸閉塞(腸の一部が物理的に塞がれる状態)になると、腸の内容物が逆流し、胃を通って口から排出されることがあります。

このような場合、嘔吐物には消化されきっていない食物、胆汁、腸液が混ざり、便のような色とにおいを呈することがあります。

これは非常に危険な状態であり、放置すると腸壊死やショック状態に陥る可能性もあります。

④重度の便秘による腸内異常

慢性的な便秘や腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)の低下がある場合、体が不要物を排出しようとして逆蠕動(内容物が逆流する動き)を引き起こし、嘔吐につながることがあります。

高齢犬や運動不足の犬に多く見られ、便が溜まりすぎると、消化器官の働きに悪影響を及ぼします。

⑤胆汁や胃液との混合物

空腹時に多く見られる「胆汁嘔吐症候群」では、胆汁や胃液と食べかすが混ざり、黄土色〜茶褐色の内容物を吐くことがあります。

このような嘔吐は、便と見間違うほどの色味になることもあり、早朝などに頻繁に起きる場合は慢性化の兆しとして対処が必要です。

見た目・臭いから判断できる危険サイン

落ち込むブルドッグ

犬の嘔吐物が「便のように見える」場合、その色・質感・臭いを細かく観察することで、体内で起きている異常の手がかりを得ることができます。

ここでは、特に注意したい危険なサインについて詳しく解説します。

①色に注目する

嘔吐物の色味は、消化器の状態や出血の有無を反映する重要な情報です。

  • 黒っぽくタール状の色
     胃や小腸からの出血が混ざっている可能性があります。これは「コーヒー残渣様嘔吐物」とも呼ばれ、明らかに病的な状態です。

  • 茶褐色〜黄土色
     胆汁や消化途中の食物が混ざることで、便のような見た目になります。特に空腹時の嘔吐で見られやすいです。

  • 赤みを帯びている場合
     消化管の上部(食道や胃)からの新鮮な出血の可能性があります。いずれも、早急な診察が望ましい状況です。

② 質感や形状もチェック

内容物が粘性を帯びていて、繊維状や塊がある場合は、腸内容物が逆流している疑いがあります。

腸閉塞や消化管の強い炎症によって、腸の内容物が嘔吐されると、まさに便のような色・におい・形になります。

また、実際に犬が糞便を誤食して吐き戻しているケースも。

多頭飼育環境や散歩中の拾い食いが原因で起きることがあるため、生活環境を見直すことも大切です。

③臭いでわかる異常

通常の嘔吐では、そこまで強い悪臭は感じられません。

しかし、強烈な腐敗臭やアンモニア臭、糞便臭を感じた場合は、明らかに体内での異常が進行しているサインと考えられます。

特に、腸管内の内容物が逆流したり、腸内細菌の異常繁殖がある場合には、臭いが非常に強くなる傾向があります。

④ 記録しておくと診断に役立つ

嘔吐物の見た目や臭いは時間とともに変化するため、スマートフォンで写真を撮っておくと、動物病院での診察に非常に役立ちます。

加えて、「何時頃に吐いたか」「何回吐いたか」「嘔吐の前後の食事や行動」などもメモしておくと、獣医師が原因を特定する手がかりになります。

こんな症状があればすぐ受診を

犬がうんちのような嘔吐をした際、「ただの一時的な不調」と判断するのは非常に危険です。

特に以下のような症状を伴っている場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。

放置すると、命に関わる重篤な状態へ進行する恐れがあります。

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症状 説明
繰り返し嘔吐をする 1日に複数回嘔吐したり、1〜2日続けて嘔吐が見られる場合は、慢性的な消化器疾患や腸閉塞、膵炎などが疑われます。水分も摂れない状態であれば脱水が進行し、緊急処置が必要です
吐いた後にぐったりしている 嘔吐後に元気がなく、立ち上がらない・呼吸が浅い・反応が鈍いなどの症状がある場合、全身状態の悪化が進んでいる可能性があります。とくに高齢犬や持病を持つ犬は注意が必要です。
嘔吐物に血が混じっている 新鮮な血(赤色)または消化された血液(黒色、タール状)が混ざっている場合は、消化管出血のサインです。出血が続くと貧血やショック状態を招く可能性があり、緊急性が高いと判断されます
下痢や発熱、食欲不振など他の症状もある 嘔吐に加えて下痢、発熱、食欲の消失などがある場合は、感染症や中毒、内臓疾患など複数の異常が同時進行している可能性があります。全身性の疾患も視野に入れ、早めの診断が望まれます。
異物を飲み込んだ心当たりがある おもちゃ、タオル、生肉の骨などを噛んでいた直後に嘔吐した場合、異物による腸閉塞が疑われます。腸に詰まった異物は自然には排出されず、開腹手術が必要となることもあります。

上記のような症状は「様子見」で済ませてはいけないものばかり。

少しでも異変を感じたら、動物病院での診察を受け、必要な検査を受けることが愛犬の命を守る最善の対応です。

自宅でできる応急処置と注意点

犬がうんちのような嘔吐をした場合、すぐに動物病院を受診するのが最善ですが、すぐに連れて行けない状況では、適切な応急処置が重要となります。

ただし、これらの対応は一時的なものであり、症状が改善しない場合は速やかに専門医の診察を受けてください。

嘔吐後は絶食・絶水が基本

まず、胃腸を休ませるために6~12時間は飲食を控えるのが原則です。

ただし、子犬や高齢犬、夏場などは脱水リスクが高まるため、清潔な水を少量ずつ与えて様子を見ます。嘔吐が止まれば、ふやかしたフードなどを少量から始め、段階的に通常の食事に戻していきます。

嘔吐物の観察と記録

吐いた内容物はできるだけ処分せず、色・質感・臭いを記録したり、写真を撮って保存しておきましょう。

また、嘔吐の頻度や時間帯、直前に何を食べたかなどの情報もメモしておくと、診察時に役立ちます。

環境の安全確保と清掃

嘔吐が起きた周囲を清掃し、ほかのペットや子どもが触れないようにします。

繰り返す場合は、部屋の中にある誤飲の可能性のある物を取り除く、ゴミ箱や食べ物を手の届かない場所に移すなど、再発防止のための環境整備も重要です。

 

こうした応急対応をしても症状が改善しない、もしくは悪化する場合は、自己判断せずに速やかに動物病院に連絡・受診してください。

獣医師に伝えるべき情報リスト

犬が嘔吐した際、動物病院での診察をスムーズかつ正確に進めるためには、飼い主が事前に状況を整理し、適切な情報を伝えることが重要です。

以下の項目は、獣医師にとって診断の手がかりとなるため、可能な限り記録しておきましょう。

チェックリスト
  • 嘔吐が始まった日時と回数

  • 嘔吐物の色、におい、質感、異物の有無

  • 食事内容・タイミング(直前に何を食べたか)

  • 拾い食い・異物誤飲の可能性

  • 他の症状(下痢、元気消失、発熱など)

  • 現在の服薬や持病の有無

  • 最後の排便・排尿の様子

  • 嘔吐前後の行動・様子の変化

とくにスマートフォンで嘔吐物の写真を撮っておくと、より正確な判断材料になります。

診察前にこれらの情報を整理しておくことで、診断と治療の精度が向上します。

よくある質問Q&A

犬がうんちのような嘔吐をした際、飼い主の多くが抱える代表的な疑問について、以下にQ&A形式でお答えします。

Q1. 嘔吐物が本当にうんちだった場合、問題はありますか?

A.他の動物の糞を誤食して吐き戻した可能性があります。寄生虫や細菌感染のリスクがあるため、今後の健康状態をよく観察し、必要に応じて検便などの検査を行うことをおすすめします

Q2. 茶色い嘔吐でも元気なら様子を見てもいいですか?

A. 一度だけの嘔吐で、その後元気・食欲・排泄が正常であれば様子見も可能です。ただし、短時間に繰り返したり、翌日も続く場合は必ず獣医師の診察を受けてください

Q3. 同じような嘔吐が続いています。病院に行くべきですか?

A. 繰り返す嘔吐は胃腸の慢性疾患や閉塞の可能性もあるため、自己判断せずに早めに受診してください。原因を特定しなければ根本的な治療ができないケースもあります。

まとめ

犬が吐いたものがうんちのように見える場合、それは単なる嘔吐ではなく、消化器系の深刻な異常緊急性の高い疾患のサインである可能性があります。

内容物の色やにおい、質感、頻度を冷静に観察し、少しでも異常を感じたら、自己判断せずに動物病院を受診することが大切です。

飼い主の早期対応と正確な記録が、愛犬の命と健康を守る大きな力となります。日頃から注意深く見守り、トラブルの兆候を見逃さないようにしましょう。

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