
犬が鳴く理由、あなたはどれくらい理解できていますか?
「また吠えてる」「うるさいな」と思ってしまう前に、その鳴き声に耳を傾けてみてください。犬は言葉を話せない代わりに、鳴き声で感情や要求を伝えようとしています。
嬉しいとき、寂しいとき、不安なとき、それぞれ鳴き方が微妙に異なるのです。
このページでは、犬の鳴き声から読み取れる気持ちや感情のサイン、そして正しい接し方について詳しく解説します。
愛犬とのコミュニケーションをより深めたい方、無駄吠えの原因を知りたい方はぜひチェックしてみてください。
犬の鳴き声には必ず理由がある
犬が鳴くとき、多くの飼い主は「うるさい」「また吠えてる」と反応してしまいがちです。
しかし実際には、犬が理由もなく鳴くことはほとんどありません。人間が言葉で感情や意思を伝えるように、犬は鳴き声を通じて「何か」を伝えようとしているのです。
例えば、喜びや興奮を感じているときには高い声で鳴いたり、警戒や怒りを感じたときには低く唸るような声を出すことがあります。
また、寂しさや不安から「クーン」と甘えたような声を出すこともあり、どの鳴き方にもその場の状況や犬の感情が反映されています。
鳴き声の意味を読み取るには、単に音の種類だけでなく、犬の表情やしっぽの動き、耳の位置、周囲の状況なども合わせて観察することが大切です。
同じ「ワン!」という声でも、尻尾を振っているのか、体を硬くしているのかで意味はまったく異なる場合があります。
また、犬種や性格によっても鳴き方には違いがあります。警戒心の強い犬や、愛情表現が豊かな犬は比較的よく鳴く傾向にありますし、年齢によっても鳴く頻度や声の出し方が変化することもあります。
つまり、「ただの無駄吠え」と片付けてしまうのではなく、まずは「この子は何を伝えようとしているのか?」という視点を持つことが大切です。
鳴き声の裏にある犬の気持ちを理解することで、より深い信頼関係を築く第一歩となるでしょう。
鳴き声別に見る犬の気持ちと意味
ここからは、犬の鳴き声別に気持ちをまとめていきます。
どの鳴き声が当てはまるかを確認し、実際にあなたの犬がどういう気持ちでいるのかを確認してみてください。
高い声でキャンキャン鳴く(喜び・不安・要求)
高い声で「キャンキャン」「ワンワン」と甲高く鳴くのは、犬が何かを強く訴えたいときに見られる行動です。多くの場合、この鳴き方は喜びや興奮、あるいは不安や要求を伝えるサインといえます。
たとえば、飼い主が帰宅したときにうれしくて高い声で吠えるのは、典型的な「喜び」の表現です。
尻尾を振りながら鳴いているなら、それは再会を歓迎している証拠でしょう。
一方で、同じ高い声でも、ケージに入っているときやひとりぼっちの状態で鳴く場合は、「かまってほしい」「ここから出してほしい」といった要求や不安の気持ちが込められていることが多いです。
この鳴き方を放っておくと、「鳴けば思い通りになる」と学習してしまう恐れがあります。喜びによる鳴き声であれば適度に応えつつ、過剰な要求には毅然とした態度で対応し、状況に応じた反応のバランスが大切です。
また、子犬が高い声でよく鳴くのは、不安や慣れない環境への反応であることもあります。
新しい場所や初めての人・音に対して驚きや怖さを感じているのかもしれません。こうした場合は、安心できる環境づくりを意識し、無理にしつけで抑え込もうとせず、少しずつ慣れさせることが重要です。
低くうなる・唸る(警戒・怒り・恐怖)
犬が「ウー…」と低く唸るとき、多くの飼い主は「怒ってる?」「噛まれるかも」と感じるかもしれません。
このような唸り声は、警戒心や怒り、恐怖といった強い感情を表しています。犬にとっては「これ以上近づかないで」「触らないで」という警告のサインであり、攻撃に出る前の最終手段ともいえます。
たとえば、知らない人や犬に対して唸る場合は、「警戒」している状態です。
自分や家族、テリトリーを守ろうとしているため、無理に近づけたり叱ったりすると逆効果になることもあります。
また、過去に嫌な経験をした相手や場所に対しては、条件反射的に唸るケースもあります。
さらに、痛みや体調不良からくる「恐怖」や「不安」が原因で唸ることもあります。
普段は穏やかな犬が、触れられると突然唸るような場合には、どこか体に異変がある可能性を疑う必要があります。このようなときは、無理に触れたりせず、早めに動物病院で診察を受けることをおすすめします。
飼い主として大切なのは、唸る理由を感情的に受け止めすぎず、「何を伝えようとしているのか」に注目することです。
そして、犬が安心できる環境を整え、信頼関係を築きながら適切な距離感で接することで、徐々に唸る頻度を減らすことも可能です。
クーン・キューンと鳴く(甘え・不安)
「クーン」「キューン」といった切ない声は、犬が甘えたいときや不安を感じているときによく聞かれる鳴き方です。
人間の赤ちゃんのように、何かを求めているときに自然とこのような声が出るのです。
たとえば、飼い主が外出の準備をしているときにクンクンと鳴くのは、「行かないで」「置いていかないで」という寂しさや不安のサイン。また、夜にひとりで寝かされた子犬が鳴くのも、親や兄弟から離れてしまったことへの安心を求める気持ちの表れです。
一方で、「かまってほしい」「なでてほしい」といった甘えから鳴くこともあります。
飼い主のそばに来て目を見つめながらクンクン鳴いている場合は、スキンシップを求めている可能性が高いでしょう。こうしたときは、軽く声をかけたり、優しくなでてあげることで犬は安心します。
ただし、常に鳴いている場合や鳴き方に変化がある場合は注意が必要です。
体調不良や痛み、違和感を感じているときも、犬は「クーン」と鳴くことがあります。特に、元気がなく、食欲もない、動きが鈍いといった変化が伴う場合は、早めに動物病院を受診することが重要です。
この鳴き声を「うるさい」と片付けるのではなく、「今、何を伝えたいんだろう?」と一歩立ち止まって考えることが、犬との信頼関係を深める鍵になります。
遠吠えのように長く鳴く(孤独・習性)
犬が「ウォーン…」「アォーン…」といった遠吠えのような長い鳴き声を上げることがあります。
これは、孤独感や不安、あるいは本能的な習性によるものがほとんどです。
もともと犬は群れで生活する動物で、遠吠えは「ここにいるよ」「返事して」と仲間に合図を送るコミュニケーション手段でした。
現代の家庭犬にもその本能は残っており、とくに飼い主が不在のときや、家の中でひとりぼっちになったときに遠吠えのような声をあげることがあります。
また、救急車や消防車のサイレン、チャイムの音など高音域の音に反応して本能的に遠吠えをするケースもあります。これは危険を知らせたり、仲間に呼びかけているつもりなのです。
留守番中に長時間遠吠えをしている場合は、強い孤独感や分離不安を抱えている可能性があります。この状態が続くとストレスが蓄積し、食欲不振や問題行動につながる恐れもあるため、対処が必要です。
改善策としては、出かける前後に犬とスキンシップを取る、安心できる空間を作る、留守中に退屈しないように知育玩具を使うなどがあります。重度の分離不安の場合は、トレーナーや獣医に相談するのも一つの方法です。
遠吠えには本能的な要素と感情的な要素の両方があるため、状況をよく観察し、その背景を理解した上で対応することが大切です。
こんな鳴き方には注意!問題行動の可能性も
犬の鳴き声には必ず理由がありますが、その中には放っておくと問題行動につながるサインも含まれています。
可愛さゆえに見逃しがちですが、「しつけで改善できる鳴き方」と「病気やストレスが背景にある鳴き方」を見極めることが大切です。
常に吠えている・夜中に吠える
一日中吠えている、または夜中に突然吠え出すといった場合は、強い不安やストレスが原因の可能性があります。
周囲の物音に敏感に反応したり、退屈さや孤独感が積み重なって吠えることもあります。
また、老犬の場合は認知機能の低下によって昼夜の感覚が狂い、夜鳴きするケースもあります。こうした場合は、環境の見直しや動物病院での相談が必要です。
来客やインターホンに激しく反応する
インターホンや玄関の音に対して吠えるのは、縄張り意識や警戒心の強さからくる行動です。
特に社会化が不十分なまま成長した犬や、もともと警戒心が強い犬種は、来客に過敏に反応します。
吠えるたびに注意やおやつを与えてしまうと、「吠えれば注目される」と学習してしまうため、落ち着いた行動をしたときにだけ褒めることがポイントです。
鳴き方が変わった・急に鳴かなくなった
これまでよく鳴いていた犬が突然静かになったり、逆に静かだった犬が突然激しく鳴くようになった場合、体調不良や痛みのサインかもしれません。
特に、元気や食欲が落ちている、触られるのを嫌がるといった行動が見られる場合は、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。
犬の鳴き声への正しい対応としつけ方法
犬の鳴き声には必ず意味があり、その背景を理解せずにただ叱るだけでは、かえって関係を悪化させたり、問題行動を助長してしまうこともあります。
犬の気持ちをくみ取りつつ、適切な対応としつけを行うことで、飼い主との信頼関係を深めることができます。
鳴く理由を正しく把握することが第一
まず重要なのは、犬がなぜ鳴いているのかを正確に見極めることです。
喜び、警戒、不安、要求など、鳴く理由によって取るべき対応は大きく異なります。たとえば、喜びからの吠えであれば受け入れつつ落ち着かせる対応が望ましい一方、要求吠えには無反応を貫く必要があります。
犬の表情やしぐさ、鳴くタイミングを観察することで、「どうして鳴いているのか?」が見えてきます。
声だけでなく、ボディランゲージや環境も含めて総合的に判断しましょう。
無視・しつけ・環境改善を組み合わせる
要求吠えやわがままからくる鳴き声には、無視することが最も効果的です。
吠えても反応がないとわかれば、やがて鳴くことをやめるようになります。
逆に、吠えたときに声をかけたりおやつを与えてしまうと、「鳴けばいい」と学習してしまうので注意が必要です。
また、吠える原因が退屈やストレスによるものであれば、散歩や遊びの時間を増やす、知育玩具を使うといった工夫で改善することができます。
吠えないでいられたときにはしっかり褒めてご褒美を与えることで、良い行動を定着させましょう。
プロに相談するのも有効な選択肢
どんなに愛情を注いでいても、しつけに限界を感じることはあります。
そんなときは、ドッグトレーナーや獣医師などの専門家に相談することも大切です。
行動学の視点から見たアドバイスや、個々の性格に合った対応を提案してもらえるため、悩みを一人で抱え込まず、適切なサポートを受けましょう。
鳴き声を通して犬ともっと通じ合おう
犬の鳴き声は、喜びや不安、要求、警戒など、さまざまな気持ちを伝える大切な手段です。「ただ吠えている」のではなく、「何かを伝えたい」というサインであることを忘れてはいけません。
鳴き声の種類やタイミング、犬のしぐさや表情を観察することで、その裏にある本当の気持ちが見えてきます。
理解し、正しく応えることで、犬はより安心し、信頼を深めてくれるでしょう。
愛犬とのコミュニケーションをもっと豊かにするために、今日からぜひ鳴き声に耳を傾けてみてください。